ライフスキル教育
~指導者・保護者の観点から~
第2回 技術指導するだけでいいの??
~ライフスキルコーチングの必要性~
5月に入りましたね。皆さん新しい環境にはなれましたか?
さて、今週は子どもに対する大人の関わり方についてお話ししていこうと思います。近年インターネットの普及により、情報量が昔と比べ圧倒的に増えましたね。同時に有料放送では、世界各地で行われているスポーツをライブで見ることも容易になりました。指導者だけでなく、保護者の方もどんどん目が肥えてきていますね。東京オリンピックでスポーツの機運が高まり、競技レベルもどんどん上がってきています。そこで、今回はライフスキルコーチングの重要性についてお話しします。
スポーツを通して人間形成を行います、としっかり明言する指導者が増えてきていますね。もちろん、昔からその重要性は周知の通りですが、一方でクラブ指導者による暴力行為が起こるのはどうしてでしょうか。クラブ指導者からの暴力行為で、スポーツが嫌いになり辞めてしまう、最悪なケースでは自殺してしまうと言うことも過去には起こっています。また、指導者の暴力行為だけではなく、指導を受けている選手による不祥事も数多く報告が上がっています。トップアスリートでも、未成年の飲酒喫煙、オリンピックの強化指定選手による賭博行為、プロ選手の薬物使用など先述の人間形成からかけ離れた行為が見られます。指導に携わる人はどのように接していけば良いのでしょうか。前回、WHOのライフスキルの概要をご説明しましたが、今回はアスリート向けに改良された(島本ほか,2013)ライフスキルをもとにコーチングの重要性についてお話しします。
図で表すと以下の通りです。

指導者の皆さんは日々努力を重ね、本当に子どもたちの成長を心から願って指導しています。私自身も、子どもたちが成長していく姿を目の当たりにすると、また自身も鍛錬しさらに成長していこうと思います。そのような人間形成に関する指導をさらに後押しするため、指導者のライフスキルコーチングについての研究を行いました。どのような研究かと言いますと、教育的指導の高い指導者と低い指導者が指導するチームの選手は、指導者からのコーチングによりライフスキルがどのように関連しているのかといったことです。具体的に話しますと、まず関西学生サッカーリーグ
2部の指導者の方にライフスキルコーチング力をアンケートさせていただき、ライフスキルコーチング力の高い指導者と低い指導者を選定しました(図2)。
指導者のライフスキルコーチング力
なぜ
2部なの?というような声が聞こえてきそうですが、アスリートを対象とした研究は、全国レベルを対象としたものが多く、「トップアスリートだから」「自分には当てはまらない」と思われるようなことが多かったからです。関西学生サッカーリーグは
3部構成となっており、ちょうど中間の
2部を対象とし、多くの方の参考になってほしかったからです。
次に、ライフスキルコーチング力の高い指導者と低い指導者を選定し、それらの指導者が指導するチームの選手に
1シーズン
3回、
2つのアンケート調査を行いました。詳細は以下の通りです。
☆対象 :関西学生サッカーリーグ
2部所属の
2大学の選手
97
内訳
A大学
47名(
4年生
4名・
3年生
14名・
2年生
9名・
1年生
20
)
B大学
50名(
4年生
7名・
3年生
6名・
2年生
13名・
1年生
18名)
1回目 シーズンイン
5月
2回目 シーズン中断期
8月
3回目 シーズン終了後
12月
アンケートの内容
☆ライフスキルの獲得を促す指導者によるコーチング(壺阪ほか,
2015)
・「可視化を促すコーチング」
(例:自分のやるべきことは紙に書くよう指導している)
・「感謝する心を育成するコーチング
(例:指導者が感謝の気持ちを日ごろから口にするようにしている)
・「目標達成を促すコーチング
(例:目標は具体的に数値化するよう指導している)
・「自発的な行動を促すコーチング
(例:失敗してもポジティブな言葉かけをするようにしている)
上記の
4下位尺度からなる。
その指導者のチームの選手に
1シーズン
3回、
2つのアンケート調査を行いました。
アンケートの内容
☆アスリートに必要な「ライフスキル」(島本ほか,
2013) ※図1参照
10側面から評価することができる尺度(計40項目).
☆ライフスキルの獲得を促す指導者によるコーチング(壺阪ほか,
2015)
を一部アスリート用に修正
・「可視化を促すコーチング」
(例:自分のやるべきことは紙に書くよう指導されてきた)
・「感謝する心を育成するコーチング
(例:指導者は感謝の気持ちを日ごろから口にしていた)
・「目標達成を促すコーチング
(例:目標は具体的に数値化するよう指導されてきた)
・「自発的な行動を促すコーチング
(例:失敗してもポジティブな言葉をかけてくれていた
といったことを調査しました。この
2つのアンケートを相関分析し、関連性を調べました。
わかりやすく図で説明するとこうなります。


次は、
第3回 技術指導するだけでいいの??
~ライフスキルコーチングの必要性~ PART2
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