ライフスキル教育

~指導者・保護者の観点から~

第5回 集いたくなる場所・絆の強い組織を作ろう!

~動機づけ雰囲気~ 皆さんこんにちは。 今回は動機づけ雰囲気についてお話ししたいと思います。 チームにはそれぞれカラーがありますね。自分に合う、合わないといったチームが作り上げる雰囲気があると思います。 選手の士気を高めていくためにも、この雰囲気はとても重要ですね。私もあらゆるチーム(海外や選抜チームも含めて)で活動してきましたが、強い組織はいわゆる一丸となって戦うことができると思います。試合に出てる選手がピッチで頑張るのはもちろんですが、ベンチメンバーも声を出しベンチ外の人は飲み物の準備や会場での誘導など縁の下の力となって動いてくれます。一方で組織が弱いチームは、試合中での言い争いやベンチからも人間的な部分をも否定するような発言を投げかける。また、ベンチメンバーは自分が試合に出たいことから仲間をけなすことが多く、ベンチメンバー外の選手は全く試合に興味がなくなってしまいます。 なぞこのような違いが出てくるのでしょうか。これらの組織のベースとなる動機づけ雰囲気は大きく2つにわけることができます。1つ目は成績雰囲気、そして2つ目は熟達雰囲気です。 それぞれの説明は以下の通りです。 成績雰囲気は、まさにライバルと毎日比較されながらも、トレーニングを積み重ねレギュラーをつかみ取ろうと励みます。試合前のメンバー発表でも一喜一憂し、試合の出来も今後の活動に自信を持ったり、不安になったりもします。当然プロの世界や、アマチュアでも全国レベルのチームは、このような雰囲気でトレーニングしていますよね。チーム内の激しい競争がチームレベルを上げ、良きライバルが自らの力を押し上げる。これこそが、まさに結果を重要視したスポーツ活動とおもえるのではないでしょうか。 一方で、熟達雰囲気とは周りのレベルがどうとかはひとまず置いといて、しっかりと自分で目標を立ててそこにコツコツ努力を重ね進んでいく。当然、周りのレベルもあることなので試合に出れるかどうかは分かりませんが、チーム自体がそのプロセスに重きを置いて評価してあげるということです。レベルを高めないと、試合に出れないのは当然ですがしっかりと自分の足元を見つめながら活動をしていく。チームもその存在に影響を受け自分の活動を見直していく。指導するものとしては、そういう選手が試合のチャンスを得ることができるようになるととてもうれしく思います。 もちろん、現場で指導するものとしては相手があることですので、悠長なことを言ってられないというのも現実なのです。結果がついてこないと評価が下がり、高いレベルの指導者は責任を取らされます。そこで、次にどう動くのかがアスリートを育てることに大きな影響を及ぼすことになります。結果だけを見て動くのか、日々の活動の細部に迫っていくのかが重要です。チームはコツコツ頑張る人が増えると変わります。すぐには結果にあらわれないかもしれません。相手があることですので、もしかしたら全く結果に反映されないかもしれません。だからと言って焦ってはいけません。しっかりと人を育てることに重点を置かなければスポーツの活動に意味をなさないからです。 ちょっと、話が長くなりましたが下の表を見てください。 これは、成績雰囲気と、熟達雰囲気によるクラブ員の「クラブへの満足度 と「部員への満足感」を調査した結果(中須賀他,2016)です。 自己開示を通すことで、熟達雰囲気の方は両方に対して有意な正の相関関係が見られました。一方で、成績雰囲気の方は有意な正の相関関係が見られませんでした。ところで、この自己開示は、清水(2003)は運動部活動の中で自己開示できるような雰囲気を作り出すことが、快適な競技活動につながるとを報告している。(※この自己開示については次回以降に詳しく説明したいと思います。) このことからも、活動は結果を優先してしまうと、アスリートはクラブに対しても、仲間に対してもあまり満足感を得られていないことが分かります。究極は、自分は何のためにスポーツしているのだろうかという錯覚に陥ることもあります。 熟達雰囲気で活動している人は、毎日の充実感があり、仲間とも強い信頼関係で結ばれます。 結局、これこそがチーム一丸となって戦える組織になり選手がしっかりと考えて行動できるようになります。誰もが結果を求めてしまいます。選手もやるからには勝ちたい。当然の事でしょう。しかし、指導者や周りのサポートする人が同じような考えになり、先走ってしまうことでチームの雰囲気を変えてしまうことに気づかなければなりません。 上記の表を見てみましょう。運動におけるすべての評価として「熟達雰囲気」は周りのレベルがどうこうというよりは、自分の向上に焦点があたっています。一方で「成績雰囲気」は自分の出来が相手を上回っているのかどうかということに焦点があたっています。当たり前のことですが、「熟達雰囲気」は自分のやるべきことが明確になり、どんどん目標に向かって活動できます。もちろん、試合に出るために周りのレベルもあることですから、頑張らないといけません。「成績雰囲気」はライバルの行動に気を取られ、自分の足下を見ていません。この状態で活動を継続すると、バーンアウトにつながりかねません。 チームのレベルを上げる(結果を出す)ために指導者・保護者の皆さんはあらゆるアプローチをします。どれも、そのチームの・その人の向上のために一生懸命にやっています。しかし、人はそれぞれレベルが違います。すべて同じようにはいきません。それらのアプローチが、選手の心に火をつけるものであってほしいと願います。 次は、 第6回 自立した人になってほしい… ~SL理論~ こちらからどうぞ