ライフスキル教育

~指導者・保護者の観点から~

第6回 自立した人になってほしい…

~SL理論~ 皆さんこんにちは。 お久しぶりです。 今回は主体性を高める取り組みについてお話ししたいと思います。 主体性という言葉は、大学生につきまとう言葉です。高校を卒業し、大学生になった途端に「主体的に」行動することが求められます。その背景には、将来自立した人にならないと社会の乗り越えていけない、乗り切れないというのが一般的な解釈であると思います。それには、主体性をもって行動しなさいということでしょう。 一概には言えませんが高校までのクラブ活動は、指導者からの押しつけられた指導の割合が高く選手の自由度はあまり高いとは感じません。しかし、大学に入ると途端に自由だと勘違いして、また周りも主体性をもって行動するよう促すのでどんどん楽な方向に進みがちです。社会に一番近い大学生が、高校まで培ってきたものを台無しにしてはいけません。なんならそれをベースにさらに上積みしていかなければならない4年間です。そこで、今日はSL(Situational Leadership)理論というのを紹介し、本学サッカー部の取り組みと併せて紹介していきたいと思っています。 このSL理論は、1977年にハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard) が提唱したリーダーシップ条件適応理論の1つです。大学サッカーを考えた場合、学生が人としての成熟度によって、有効なリーダーシップスタイルが異なる、という前提に拠っています。SL理論では、縦軸を共同的行動・横軸を指示的行動として4つに分け、それぞれの状況でリーダーシップの有効性(指示決定の指導の強弱、説得・参加型スタイルなど)を高めていくにはどうすれば良いかを示しています。 SL理論を図で表すと以下のようになります。 SL理論において有効なリーダーシップは、成熟度のレベルによって関わっていくことが大切です。 例えば、大学サッカー部を例にしてみましょう。 【教示的】 ほとんどの学生は、高校時代に規則的な生活を送り、決められた格好で学んできています。大学の一見自由な雰囲気に一気に弾け飛びそうな入学して間もない1年生が、意気揚々とクラブ活動に乗り込んできます。そこで、しっかりとクラブの方針を伝え理解させるために、教え示します。ここでは、コーチングよりもティーチングすることが大切です。いわゆるオリエンテーション的な時期と位置付けています。ここで甘やかしてしまうと、一気にだらしのない学生になってしまいます。すごく大切な時期と捉えています。プレー面でも努力せずに、高校の貯金だけでプレーし伸び悩む人も多く見られます。 【説得的】 2年生に上がりました。少しずつティーチングからコーチングに代えていきます。それでもまだまだ未成年ですから、指示的な部分は必要です。1年時と異なるのは、そこに学生の意見も取り入れながら進めていくところです。活動に理解が深まると、少しずつ本人の主体性を促しながらチーム作りを行っていきます。今までやらされてきたことに対して、本人が理解を深め自ら取り組みだすと恐ろしいくらい人間的にもサッカーのレベルも高まります。 私は小学生から大学生まで指導してきましたが、ゴールデンエイジを呼ばれる小学校高学年が一番技術的に伸びると言われていますが、人間的にもプレー面でも一番伸びてくるのは大学生だと思っています。 【参加的】 さて、この2年間でしっかりと活動方針を理解してくると、次は自立に向けて主体的な行動を増やしていきます。共同的な部分は2年次とそれほど変わりませんが、ティーチングよりコーチングが増えていきます。つまり、こちらの指示はどんどん減っていき、本人のやる気や主体性を促していきます。こうして、最後の4年生を迎える準備をします。最終学年を迎えるにあたり、ここでの準備期間も成長するうえで重要なポイントになると思います。 そのため、3年生後半あたりからリーダーとなる意識付けを練習しておくとスムーズに最終学年に入れると思います。 【委任的】 いよいよ4年生になりました。集大成です。就職活動でとても忙しくなりますが、ここを経験せずに体育会クラブ所属とは大きな声で言えないと思います。指示的な部分も共同的な部分も減少していきます。学んだ知識を積極的にチームに還元してもらいます。つまりはリーダーとなり引っ張ってもらう役目を与えます。学生への対応についても、大人扱いすることで本人もやりがいを感じ責任感も高まります。 簡単ですが、以上のように4つにわけ、各学年により関わりを変えていきます。もちろん、最終的なあるべき理想像を共有することが大切です。人前で話す、周りに気を配る、苦しい時もブレずにやり通す。我慢強さと謙虚さを兼ね備え、前向きに物事をとらえ行動できる人になってもらいたいと思います。こうして、本学サッカー部ではSL理論を用いて日々学生の取り組みに関わっています。 「大学生は主体的に」という言葉はよく聞きますが、なかなか本学のサッカー部員は最初から主体的には行動できません。しっかりとした教育を施し、共同的に進み理解を深めることで、最終的に主体的な行動をする機会を与える。それをしっかりとやり遂げることで、ようやく真の主体性が生まれるのではないでしょうか。それこそエネルギーがいりますし、我慢と忍耐の日々です。学生が成長していくのがすごく嬉しく、また頑張ろうと思えます。 次回は、 第7回  他者を理解し、対人関係を高めよう! ~感謝する心・謙虚な気持ち・考える力~